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2015年02月25日

野生動物の保全と管理

「野生動物の保全と管理―新たな段階に向けて―」 平成27年2月21日 於兵庫県立美術館

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兵庫県森林動物研究センターが主催するシンポジウムに出席。3人の研究員が兵庫県におけるニホンジカ、ツキノワグマ、ニホンザルの生息数、農産物への被害状況と対策、捕獲状況などを発表。そのあと「対策強化の成果を踏まえた今後の課題」として横山真由美主任研究員の話があった。

兵庫県ではシカの年間捕獲目標頭数を30,000頭以上(2014年は38,992頭)と大幅に引き上げるなどの対策強化をしたことから生息個体数は2010年の159,000頭をピークに減少傾向に転じた。捕獲対策が進んでいない地域もある結果、被害軽減の効果が全県的に波及するまでには至っていない。捕獲目標を達成している地域も含めてなお継続的な取り組みが必要。

また新たな課題として、生息していなかった場所への分布拡大で被害が急増している地域があることや、哺乳動物に寄生するマダニが、新たな人獣共通感染症を引き起こすウィルスを媒介することがわかり、捕獲従事者のマダニ対策強化も必要となっている。

シカやイノシシの他にもクマやサルの被害、アライグマの被害なども深刻になってきていることなど、徹底したデータによって示されている。そのデータ解析による対策もきめこまかくとられていて、兵庫県が野生動物に関する研究の先進地であることがよくわかる。

研究者や捕獲従事者、現場での監視者の地道な努力に加え、野生動物(シカ)を活用してペットフード作りをしている私達も、その保全と管理の最前線を認識しながら取り組んでいかなければならないと思った。それにしても年間40,000頭近く捕獲しているにもかかわらず、解体処理施設へ持ち込まれるのはわずか2,000頭だという。野生動物の腸管には大腸菌などの細菌があることから、必ず衛生的な施設で処理をすることが大切と言われている。EGサイクルでは確実に守っていることである。

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このシンポジウムのまとめをされた横山先生からは、一昨年特別に鹿に関するレクチャーを受けた。狩猟時代にさかのぼっての鹿の歴史から、大正、昭和に外貨獲得のための毛皮輸出で鹿をとりつくしたこと。南但馬の一部に逃れ棲んだ小さな群れが、のちに野生動物保護政策によって次第に増えてきて、現在のように環境や農林業に大きな被害をもたらすようになったことなど、詳しく教わった。元来、野生動物は貴重なタンパク源として食べていたのに、畜産が奨励されるようになって食べなくなってしまった。人間と野生動物が共生するためには、人間が生態系を保つ努力をしないといけない。互いを支え合う資源であることを認識することだ。野生動物は「増えたら食べる。減ったら食べない」と、とても明快に教えてくださった。

また、夏休み期間中に丹波市にある森林動物研究センターで施設の一般公開と、研究成果の発表会が開催されるそうだ。