2021年09月29日

■秋に注意したい尿路結石 【小野池ペット栄養管理士】vol.21

秋に注意したい ~手作り食でケア(尿路結石)~

だいぶ涼しくなり、すっかり秋を感じる季節になりました。
夏と違い、涼しくなると水を飲む量が減るというのは当たり前のことですが、その分、特に季節の変わり目は水分補給を気にしてあげて欲しいです。また、寒くてあまり動かなくなると、排尿を我慢したり、排泄が十分ではなかったりすることもあります。膀胱炎が慢性化しますと、腎炎や尿路結石など他の疾患へとつながる恐れがあるので、十分な注意が必要だと感じます。

今回は夏から秋にかけての季節の変わり目に注意したい尿路(尿道)結石について、手作り食のお話をしたいと思います。通常、何か病気になり、病院の処方食を食べさせる場合、必ず薬を飲ませることが前提となります。では、ずっと薬で症状を抑えることが身体に良いことでしょうか? 「いいえ」と思ってくださる飼い主さんは多いはずです。その通りで、体質改善して身体の持っている自然治癒力で根治すれば、薬は必要なくなります。これが完治ということです。
そして、体質改善は食餌で出来るとホリスティック(代替)医療の分野では言われています。でも。食餌で毎食完全に栄養バランスをとることは大変ですよね。なので、1ヵ月位の期間でバランスがとれるように献立を考えれば、良しとしましょう。

■■■ 手作り食で結石を克服 ■■■
キラキラと光る砂のようなものが犬のおしっこに・・・「これは、何?」と思って病院で尿を調べてもらったら結晶でした。これがひどくなると、結石になって手術しなくてはならなくなるところでした。発見が早かった為、症状はそれほどひどいものではなく、フードを病院が出す処方食に変えるしかないとの事でした。

獣医さんからフードのサンプルをもらい与えてみたところ、大量の水を飲みオシッコの回数と量が半端ではなくなりました。「何かがおかしい・・・。」と、このとき疑問をもちました。大量の水を飲んでオシッコを出させることは、病気を治すということではなく、対処法でしかないのではないか・・・。将来、肝臓や腎臓に弊害が出てくるのではないのか・・?

フードに含まれている、粗灰分が7%以下の物なら、獣医さんで買うフードでなくてもよいことを知り(症状が軽かった為)、あらゆるフードを調べてみました。調べてみて分かったことは、成分をきちんと表示していない物が、約半分、粗灰分7%以下の物は、私が調べた限りでは3個しかありませんでした。そして、粗灰分7%以下のフードに替えてみましたが、結果は変わらず。フードに対しての疑問から不信感を覚えてしまった私は、それならば、自分で作ってみようと思ったのでした。犬にとって、1日に必要な栄養素からカロリー等を、本を頼りに計算してメニュー作りに励みました。確かに始めはいろいろと気になり、簡単なことではありませんでした。でも手作り食にしたことで、結晶をその後見ることはなく、とっても元気にしています。

成犬体重10kg(去勢・避妊済)の通常1日に必要なカロリーは約630kcalと言われていますが、その日の運動量や体調によっても、違ってきます。そんなことを考えると、改めてフードに疑問を持つようになりました。体重だけで、1日の量を決めてしまうこと自体、どこか無理があるのではないでしょうか? ライフステージをパピー、レギュラー、シニアと大まかな分け方はしているものの、犬種や生活環境、ウンチの状態など考慮しなくていいのでしょうか?

緑黄色野菜の不足や水分をあまりとらないでいると、結石ができやすくなります。ただし、水質のマグネシウム/カルシウム比が低い地域というのがあるそうです。こういう地域では、マグネシウムを多く含む食品を積極的にとることで改善がみられるようです。マグネシウムを多く含む食品には、わかめ、ゴマ、小麦、納豆、ひじき、ごぼうなどがあります。自分の暮らしている地域の水質について、よくわからないということも多いと思います。犬に与えやすいわかめ、ゴマ(すったほうがいいです)、ひじき、ごぼうなどをフードプロセッサーにかけて与えてみてくださいね。

■■■ 「結石予防の食品」と量の目安(1日)■■■
わかめ(5~10g)、こんぶ(5~10g)、黒ゴマ(5g)、白ゴマ(5g)、抹茶または茶殻、大豆(5g)、炊いた玄米(100~200g)、炊いたハト麦(50~100g)、赤シソ(1~3枚)、青シソ(1~3枚)、納豆(50g)、ニンジンの葉(20g)、ひじき(5g)、さつまいも(50g)、カボチャ(50g)、ごぼう(10g)、カイワレ大根(5g)、カブの葉(20g)※どの食材もフードプロセッサーなどで細かく砕いて与えます。

■■■ 取り過ぎないように注意が必要な食べ物 ■■■
肉類(0~50g)、魚介類(0~50g)、卵(1個)、やぎ乳(犬用ミルク含む)などの動物性たんぱく質、ほうれん草

  • シュウ酸の多い、ほうれん草は生の骨も一緒に与えて、カルシウムを同時に与えます。
  • 数種類の肉(鹿、鶏、ラム、馬、ウサギ等)の骨付きが手に入ればローテーションし、1ヵ月に1度位はレバー等(50g以内)の内臓を与えてください。また、魚はイワシやニシン、天然のサケ、マグロ等を肉の代わりのタンパク質として与えてください。
  • ( )内の量はだいたい体重10kgの成犬用です。これを基準にスタートしてください。毎日のウンチの状態で少しずつ調整をし、痩せはじめたら量を増やし、太ったら減らすようにするので大丈夫です。野生では、1週間の絶食もあります。動物は体調に合わせて、太ったり痩せたりする方がとても自然です。


■■■ 毎日与えてあげると良いもの ■■■

・ドライハーブ
・りんご酢(オーガニック)
・ビタミンCの多い大根やきゅうり等、季節の生野菜(サプリメントで与える場合は天然ビタミンCまたはエステルC
・クランベリーフルーツ(尿を酸性化したり抗菌性がある)

 
■■■ 食餌の与え方 ■■■
水分量の多い食事が大切です。主食は炊いた玄米とハト麦の両方合計で約150g/1日分をドロドロのスープ状にします(別々でも一緒に炊いてもかまいません)。少量の生肉はブロック(できれば骨付き)。野菜や果物をフードプロセッサーやミキサーでジュースにしたもの、ハーブやリンゴ酢など、「結石予防の食品」を加えて与えてください。加工したドッグフードと違いますので毎日同じものを入れるより、その季節の旬の野菜や果物を与える方が自然で栄養素も多いです。

  • 白米はカロリー源としてはよいのですが、ビタミンや栄養素、食物繊維が少ないため、結石予防にはあまり効果が期待できません。ただし、急に玄米を食べさせるとお腹を壊すような犬もいます。切り替えするのに、白米→胚芽米→5分づき→玄米と、2週間以上かけて切り替えてください。


■■■ その他、手作り食におすすめの食材と注意点 ■■■
【ニンジン】とても栄養価があるので、毎日でも与えて欲しい食材ですが、ビタミンCを破壊する酵素(アスコルビナーゼ)を含んでいます。ビタミンCが豊富な食材、例えば大根と同じタイミングで食べさせてしまうと、器の中でビタミンCを一瞬でなくしてしまいます。ですから、ニンジンはおやつとして与えるなど、食餌とは別に与えるか、酢やレモンをかけて酸性にして与えると他のビタミンCを分解せずにすみます。
【大根】生の大根はデンプン、たんぱく質、脂肪の消化を助ける働きがあります。また、抗ガン作用のあるリグニンという食物繊維に加え、ビタミンCが豊富です。でも、ニンジンと一緒に与えないようにしましょう。
【キャベツ】キャベツについて、以前多くあげ過ぎないように書いたことがあります。でも、キャベツは胃腸の働きにとても良いです。胃潰瘍やガンにも効果的と言われています。キャベツにしか含まれていないビタミンU(キャベジン)は火を通すと壊れてしまいます。
※アブラナ科の野菜について…胃腸に負担の少ない野菜です。菜の花、キャベツ、白菜、ブロッコリーはガン抑制物質が含まれていることがわかっていますが、アブラナ科(他にカブ、小松菜、カリフラワー等も含め)の野菜は毎日与えすぎると、甲状腺の機能が低下すると言われています。1食あたり全体の10%を超えないようにしてください。
【キノコ類】マイタケ、シイタケ、エノキダケ等はノンカロリーに近い食品で、食物繊維が豊富です。余分なものを吸着し排出する作用もあるので、少量でも頻繁に与えてください。特に干しシイタケはビタミンDが多いので骨を丈夫にし、貧血を予防したり神経を正常に機能させる働きがあるそうです。
【リンゴ】食物繊維が多く、腸を正常に機能させてくれます。必ずよく洗って皮ごと与えます。皮に多く含まれているペクチンが腸内の善玉菌を増やしてくれます。

■■■   結石別の注意点  ■■■
・ストルバイト結石=市販のペットフード(量販ドライフード)中に多く含まれている原材料はトウモロコシと大豆です。マグネシウムが多く含まれているので注意が必要です。

・シュウ酸カルシウム結石=シュウ酸の多い、ほうれん草やキャベツを与える時はカルシウムを一緒に与えないとバランスが崩れて結石になるので注意が必要です。
※ミネラルは必要な栄養素です。結石を起こさないために排除するのでなく、バランスを大切に考えてください。

カルシウムの一番おすすめは抗がん作用のある骨髄が含まれた「生の骨」です。加熱した骨はもの凄く硬くなっているので、危険ですので絶対に与えないでください。また、手軽なカルシウムは卵の殻です。卵の殻をよく洗い、卵殻膜は消化に悪いので剥がしてから、殻のみを十分に干し、ミルで粉砕して粉状にしたものを小さじ1杯程度、食餌に加えます。消化吸収に優れた良質のカルシウムを与えることができます。

最後に、涼しくなると、夏と比べて飲水量を気にしなくなってしまいがちです。しばらくは気にしてあげて、食餌は水分の多い手作り食にするのが予防になります。もし、尿道(尿路)結石だと分かった場合、腎臓に問題がないか検査をし、獣医師の指示に従うことが大切です。また、治療でお薬をしっかり飲んで完治してから、手作り食で生活改善、体質改善等、ケアをしください。

おわり

Integrative Animals Wellness Advisor/ナチュラル・ペットケアアドバイザー/ペット栄養管理士    小野池 智香
注)無断転記・無断転用禁止。この内容を個人のペットの食餌作り以外に使用することはご遠慮ください。

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小野池智香

ペット栄養管理士 小野池 智香

愛玩動物飼養管理士1級 / 株式会社LIKE TODO JAPAN製薬 代表取締役 / 神奈川県未病産業研究会会員 / 日本乳酸菌学会会員 / 日本食品免疫学会会員 / フードメディシンネットワーク会員 / バッチ財団登録プラクティショナー(BFRP)